歯科インプラント治療とは?

 インプラントのしくみ  インプラント(Implant)とは、「植え付ける」という意味をもっています。医科領域では 人工関節等の整形外科用インプラントなどがあります。 しかし現在インプラントといえば、歯科領域でのインプラント治療のことを意味するようです。
 インプラント治療では、歯が抜けた時に人工の歯を“植立”することで、より自然に近い、 美しい“自分の歯”を取り戻して、食事もおいしくいただくことができます。
 「入れ歯」や「ブリッジ」、「差し歯」はどうしても噛む力が劣ってしまいました。 でも、インプラントは違います。高齢化社会を迎える現代、またより歯の美しさが追求されるいま、 まさに主役ともいえる治療法として、多くの患者さんの注目を集めています。

インプラントの歴史

 世界に数多く残された遺跡のなかから発見された人骨やミイラに、 歯の治療痕が残っているものは少なくありません。
  例えばインカ帝国の遺跡のミイラからサファイアをはめ込んだあごの骨が見つかったり、 エジプト文明には歯の抜けたところへ象牙や宝石を埋める試みがあったりしたそうです。 もちろんそれらすべてが実際に機能的であったかどうかは定かではありません。 もしかすると死後の世界へ向けての儀式的なものであったのかもしれません。 いずれにしても昔から歯に大きな関心が寄せられていたことは間違いありません。
インカ時代のインプラント しかしそんな中、驚くべき発見がありました。 それは西暦700年代のマヤ族の女性のミイラに、あごの骨と一体化した貝殻が埋めてあったということでした。 それは生前に入れられたものであるという可能性が高く、永久歯が抜け落ちたあとの治療法として 人工歯を入れるという考えが確かにあったということです。
 現在最先端医療として普及しているインプラントですが、 その考え方や試みは太古の昔からスタートしていたのです。

近代インプラント治療の変遷

 「インプラント」という名称が初めて使われたのは、1885年。 アメリカのヤンガーが手術で用いたのが最初とされています。
 20世紀に入ると、歯科インプラントは戦傷外科として戦争で顔面を損傷した兵士に対し、 義顎を施すための治療技術から発展してきました。
 骨膜下インプラントは、1938年ミュラーによって用いられ始めました。 一方、骨内インプラントの発展は、アメリカのグリーンフィールドらが試行錯誤を繰り返し、 さらにフランスのシェルシェブは、コバルトクロム製のスクリュー状インプラントを1962年に開発し、注目を集めました。
 ただし、どんなにインプラント技術が高くても、素材そのものについての難問は残されたままでした。 物質によっては、人体が拒絶反応を起こし、異常をきたしてしまう場合もあるからです。
インプラント素材の条件としては4つあります。
「人体に毒性がない」
「人体に免疫反応を起こさない」
「噛む力に耐えうる強度がある」
「人体になじみやすい」。
素材としては、コバルトやクロム、金、白金、セラミックなども用いられましたが、いずれも満足できるものではありませんでした。 それをクリアしたのがチタンです。このチタンの登場が、インプラント発展の起爆剤となりました。 でも、その偉大な発見が、もともとは偶然の産物だったというのですから驚きです。

【きっかけは、ウサギのおかげ!?】
ブローネマルク博士  1952年、スウェーデンの医師P・I・ブローネマルク教授が、ある実験のためにウサギの膝の骨に取り付けた装置を、 数か月後回収しようとしたら、なぜか装置がはずれない・・・。
 調べてみると、チタン製の装置のネジにウサギの骨が見事に結合していたのです。 これが、チタンと骨の完全結合を発見するきっかけとなりました。
 ブローネマルク教授はその後、この現象が人体に応用できないかと考え研究を重ねた結果、 人体でも拒否反応を起こさず骨とチタンが結合することを確認。 この現象を、オッセオインテグレーション(osseointegration)と名づけました。 ちなみに、オッセオ(osseo)とは「骨の」、インテグレーション(integration)とは「結合」や「一体化」を意味します。 このオッセオインテグレーションの発見こそが、インプラントを飛躍的な発展に導いたのです。
そして1965年本格的に人間への応用が始まりました。
歯科での応用は医科の後になります。現在でもチタン製の器具は医科、歯科で多く使われています。 例えば骨折した部位をつなぐプレートとそれを留めていくネジですとか、義肢と残った骨をつなげる部品、 癌などで切除してしまった体の一部をシリコンで作り、それを留めるためのマグネットを留めるためのネジ、骨に埋め込む補聴器などです。

【インプラントの成功率】
 1965年、ブローネマルク教授によって治療された最初の患者さんは、 治療後40年近く当時のインプラントを使用して、最近亡くなりました。
 現在、ブローネマルクインプラントの20年累積残存データとして発表されているものには、 1983年から85年にかけて治療された報告で、上のあご(上顎)の残存90.0%、下のあご(下顎)の残存92.3%というデータがあります。
 また、10年以上のデータでは96%、5年以上のデータでは98%以上と報告されています。
 現在でもインプラントはその形を変えて新しい物が開発され続けています。 歯肉に対して問題ない物、骨の吸収のない物、審美性に優れた物などです。 また、インプラント体の表面の形態も、できるだけ骨との結合が高い物が開発されていますので、 残存率はさらに上がっていくことでしょう。


                                  【参考文献】
                                  入れ歯とは違う“第3の歯”
                                   歯の「インプラント治療」がわかる本 


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